蓑健太郎 弁護士ブログ

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弁護士 蓑健太郎が
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弁護士任官の壁

昨日土曜日、弁護士任官推進中部ブロック大会に参加するため、名古屋に行ってきました。

弁護士任官とは、弁護士としての経験を積んだ人が裁判官や検察官になることを言います。

英米法系の国では、法曹一元制度が取られているため、弁護士などの経験者のなかから裁判官や検察官を選ぶシステムになっていますが、日本は原則として司法試験合格後、司法修習を終えた者の中から裁判官や検察官を選ぶキャリアシステムを採用しているので、弁護士任官は例外です。

もっとも、2001年に発表された政府の司法制度改革審議会最終意見書の中では、裁判官の給源の多様化、多元化を目指すべきとされており、最高裁と日弁連が一致協力し、恒常的な体制を整備して協議・連携を進めることにより、継続的に実効性のある措置を講じていくべきとされていました。

しかしながら、現実の弁護士任官への道は非常に厳しいようです。2001年から2010年までの10年間で任官した弁護士は51名しかおらず、近年は多くて5名程度に止まっています。弁護士任官が増えない理由としては、任官申込み後に行われる最高裁の採用過程において、最高裁の諮問機関である下級裁判所裁判官指名諮問委員会のなかで、候補者の約40%が不適任とされたり、任官申込みを取り下げたりしていることがまず挙げられるようです。その理由ははっきりしませんが、弁護士としての能力や裁判官としての資質の不足、具体的な任官意欲・動機付けの不足、裁判官としての職責に対する自覚の不足、組織人としての適正の欠如などがマイナス要素として評価の対象とされているようです。

一連の司法制度改革については、相当程度実現したと評価できるもの(裁判の迅速化、法曹人口の拡大、裁判員制度の施行)もありますが、まだまだ道半ばといったものも多くあります。弁護士任官については、後者の典型例と言えるでしょう。国民的な議論を呼ぶ問題でもないだけに、早々の改革は険しく、実現には最高裁と日弁連とのさらなる協議が求められます。

法律業務のIT化

最近、依頼を受けていた案件が終了したことで、事件ファイルを記録棚の隅に移したりすることが増えてきたのですが、ふと思ったことが。

うちの業界は、ペーパレス化が進んでいないなということ。

時代は電子化だ、クラウドだ、ユビキタスだ、などとマスコミは喧伝していますが、民事訴訟規則は書類の送達にファックスを認めていても、メールなどは認めていません。同じ法律でも、会社法は株主総会招集通知を電子メールで発送することも場合によっては可能としている(会社法299条3項など)ことなどに比べると、違いを感じます。

弁護士の中には、手書きの手帳ではなくてPDAやスマートフォンでスケジュール管理をしたり、事務所のメールを携帯電話に転送したりして、出先でも仕事をこなす方もおられますが(一般の会社では当たり前のことでしょうが)、私なんかはあまりその気にはなりません。というのも、事件記録は個人情報のかたまりですから紛失が怖いですし、裁判の書類は通常はA4版の紙に12ポイントの字、字数は37文字、行数は26文字という余裕のある構成で書かれているため、ちょっとの事件でもかなりかさばります。

かといって、オフィス複合機のソーターで全ての事件記録をスキャン、PDF化してタブレット端末で持ち運ぶことも考えられますが(端末には暗号をかけます)、厚みのある紙媒体では「この記録のこの辺の真ん中あたり」といった感覚で把握できていた重要箇所も、電子データでは全くわかりません。最近のソフトでは付箋を付ける機能もありますが、やはり100頁を超えるものとなると、使いづらいです。

そうなると、やっぱりいつもの紙に落ち着いてしまい、ずるずる来てしまった感があります。当面は紙から離れられないでしょうね。

ところで、私は先月からスマートフォンに機種変更したのですが、法令検索には便利です。というのも、自治体や社会福祉協議会主催の法律相談を担当するとき、今まで遭遇したことのない相談が持ち込まれて、関係法令を調査したくなったとき、インターネットに接続して色々な法令を検索することができるからです。総務省の法令データ提供システムは非常に多くの法令を調べることができます。それも無料です。

ただ、私が契約している判例検索システムを利用するには、スマートフォンの画面は小さすぎるので、モバイルPCがあればいいなとは思ってます(出先に持って行くのが億劫なので、あまり持ち運んでいませんが)。